愛華のスマホの画面を食い入るように見ていた凛子だったが、壁にかけられた時計を見て「やばッ!」と言いながら勢いよく立ち上がる。

「修学旅行の引率についての会議があるんだった。ちょっと行ってくるね!」

「は〜い。行ってらっしゃいませ」

バタバタと慌ただしく足音を立てながら凛子は保健室を出て行った。その後ろ姿を見送った後、愛華はまた読みかけの本を手にし、ページを捲る。

保健室はグラウンドの近くにあるため、運動部の練習をする声や音が愛華の耳に届く。この暑い中生徒は元気だな、と思いながら愛華は本を読んでいた。その時である。

「先生〜、怪我した。手当てして〜」

保健室のドアが開き、ジャージ姿の男子生徒が入って来る。黒いクシャッとした髪の毛に、高めの身長、小麦色に焼けた肌は彼が運動部に入って毎日汗を流している証拠だ。そんな彼の膝からは血がダラダラと垂れている。

「ちょっと、血が垂れてるじゃない!」