「やっぱり酔ってるわ俺。」



突然口を開いたまーちゃんが、作り笑いしながら私に向けて話す。



「……………。」



何か言わなきゃとは思うのに、

何も言えない自分がいた。




「戻るぞ。そろそろ母さんも心配するだろ?」



「…………。」





重くなってしまった身体を起こして、床に足をつける。
ポカポカしていた身体がどんどん冷えて、火照った熱さは何処かに消えた。





ゆっくりと立ち上がり、ふと私の足元にさっき脱ぎ捨てたスーツの上着が置いてあったから、まーちゃんに無言で渡す。



「あぁ。わり。」



「……………。」




ねぇまーちゃん、私何も話してないよ?同じ空間にいるのにまーちゃんだけ喋ってまるで独り言だよ?


二人でいるよ?


私、此処にいるよ?






「ほら行くぞ。」



今度は私の返事なんて必要ない程に、私を置いて部屋を出て足早に暗い階段を降りていった。



私はゆっくりと足音も立てず階段を降りて玄関についた頃には、まーちゃんの靴はもうなくて


置いていかれた寂しさがだんだんとこみ上げてしまう。







鍵いいの?まーちゃん。




別にそんなことどうでも良いんだけど、寂しさ誤魔化す為の無理やりな疑問。そんな事を思いながら閉められた玄関の扉を開けると、風圧で澄み渡った外の匂いを風と感じ、またあの時と同じ、






暗闇に光る月の光が綺麗だった。





白と黄色が混ざり合う月の色が、更に綺麗に思えた。














私、まーちゃんを好きになった。