豪邸だが漫画や小説と違って本家が偉いとか分家は弱いとかは無いらしく、そういう類いの内容が好きな私はちょっとだけガッカリしてお母さんが笑っていた。
「お父さんがそんなお家柄な人に見える?確かに本家というか、お義兄さんのお家は大きいけどここは田舎だし、皆良い人だよ。漫画の話通りならお母さん虐められちゃうでしょ。フフ」
そう言ったお母さんは、笑いながら少しシワになりかけている喪服のスカートの裾を直して車から降りる。
まぁそうだよな、ていうか本家の周りの家も私の家より大きい家が沢山並んでいて、本家の圧力が~とか、先代の力のなんちゃらがとか、そんなの現実にはある筈ないよなとお母さんの後ろをついていった。
来客多数なのか二重扉の玄関のドアは全て開いていて、お母さんも玄関に入るないなや、慌ただしく動くおばさん達の群れの中に消えていく。
私はテーブルの上にずらりとお菓子やジュースが並んであるリビングで勝手にくつろぐことにした。
勝手に缶ジュースを開けて遠くでおばさん、おじさん達の声をBGMにしながらスマホを触る。
──帰ってくるんだ──政・くん。
──年ぶり──なん──か──ね
──だ──ょう──か?
右から左に流れる会話の声は、どれも私には関係ない
筈だったんだけどな。


