嘘からはじまる恋のデッサン

私の目の前にはメガネをかけた長身のスーツ姿の男性が立っている。見た目からしてまだ二十代半ば位だろうか。その胸元にはシロクマのボールペンがささっていた。

「あの違ったらごめんなさい、もしかして……マサルじゃないかな?」

目の前の男性は困ったように目じりを下げると、私から少し距離を取ったまま気まずそうな顔をしている。

(マサルって……もしかして……)

私の心臓が爆発しそうなほどに音をたてて加速していく。こんなことがあるのだろうか。
まさかあの俊哉と面と向かって会うなんて。

私はうまく言葉がでてこなくて俯いたまま小さく、こくんと頷いた。

「そっか、やっぱりそうか。ごめんな驚かせて。僕は……その……シロクマ先生をさせてもらっている、者です……」

俊哉は頭を掻きながら、たどたどしく自己紹介をする。

「えっと……どこから話したらいいかな。あっ……なんでここがわかったかだよね。実は僕たまたまこの公園のすぐそばに住んでるんだ……で、仕事帰りにその……マサルからメールが来て正直驚いた」

「……こんな偶然……」

蚊の鳴くような声で呟くとすぐに俊哉が口を開く。

「だよな。本当僕も驚いたよ。あの……もし良かった……その、ここ座ってもいいかな?」

視線だけ俊哉に向ければ俊哉がベンチの端を指さしている。

「……はい」

私が答えると俊哉ができるだけ私に近づかないようにベンチの端ギリギリに座るのが分かった。そして手に持っていたビジネスバッグとコンビニの袋を地面に置いた。

私はベンチの端に座る俊哉にちらりと目を遣った。

サラサラの少し長めの髪の毛は後ろを刈り上げていて清潔感がある。身長は百八十くらいだろうか。シロクマ先生と名乗っているくらいだから、その名前の通りクマさんみたいに少しお腹がぽっこりしてて、ポロシャツにチノパンみたいな格好の人の良さそうなオジサンを勝手に想像していたのに全然ちがう。

「あの……俊哉先生……」

私の言葉に一瞬、俊哉が目を見開いてキョトンとした。