踏み込んだなら、最後。





「行っちゃったら…、シロちゃんのこと嫌いになるかも…だよ」


「…へえ。僕を脅すなんて、やるね」



私のことを選んでくれるでしょう?

小さな頃、風邪をこじらせた私が死んじゃうかもって泣いていたあなたなのだから。



「ねえ、ユキちゃんはさ。……お父さんに会いたいって思う?」


「え…?」


「昔から写真、持ち歩いてただろ。…今も」



いつかに見せたことがある。

私がずっとずっと待っている人だと、お父さんが写った唯一の1枚を。


思い出が少なすぎて、声すら忘れてしまったけれど。



「……思わない、よ」


「うそつき。そんなのが僕に通じると思ってるのかよ」


「ちがう。思っても会えないから…、もう思わないようにしてるの」



迎えになんか来てくれなかった。


この13年間、ずっとだよ。

待って待って待って、叶ったことなんかない。