踏み込んだなら、最後。





「ユキちゃん」


「……シロ、ちゃん」



まさかそこに居るだなんて。

遊楽町駅を出たところにある、時計塔の下。


待ち合わせスポットとして有名らしく、人混みに紛れながらも紛れきらないルックスの男の子が私服姿で手を振ってくる。



「デートしよっか、ユキちゃん」



呼ばれる名前。


それだけでじわっと浮かんでしまう私に微笑んで、手を握ってくれた。

小さい頃みたいなのじゃなく、指を絡めて隙間なく恋人つなぎ。


まるでごく普通のカップルがお休みの日に待ち合わせてお出かけするような、また夢みたいな日だと思った。



「シロちゃん、道が違うよ」


「うん。今日はそこには行かない」



游黒街までにはいかない安全圏でもある遊楽町。

今日の目的はここだと、このなかだと。


今までのシロちゃんに戻ったみたいだ。

物騒な記憶ぜんぶを消して、ひまわり園にいた頃のシロちゃんに。