踏み込んだなら、最後。





「俺のあげるよ」



そのとき、穏やかに放ったのは向かい側に座っていた千石くんだった。



「いーの!?」


「うん。俺もう出なきゃだし、朝はいつも食べなかった人間だから」


「ありがとっ!!」



一件落着。

新しい顔である千石くんに言われたことで、ふたりも納得したように落ち着いた。


それにしても土日もバイトを入れてるんだ、千石くん…。

休日くらい休むべきだと思うのに。



「あ、海未ちゃん」



そんななか、スポーツバッグを背負って部活に向かおうとしている妹を私は引き留めた。



「これ、千石くんに渡してあげて」


「……なんで私」


「いいからいいから」


「…わかったけど」



海未ちゃんの手に持たせたものは、ひとつのお弁当箱。

千石くんは忘れているというか、自分に作ってもらえるとは思っていないようだし、私が渡しても良かったんだけれど…。