踏み込んだなら、最後。





「だいぶ俺に依存してるよ、汐華さん」


「っ、」


「信じてた人間に騙されまくって可哀想で憐れな汐華さんに、せめてこれだけは教えてあげる」



とっくに消えてしまった、いつかの赤いシルシ。

消えないで消えないでと願っていた、私の首についていた赤色。


つうと指でなぞってきた千石くんは、瞳が揺れる私をこれでもかと言うほど追い詰めてくる。



「なにかしらの目的のために動いてた人間が元いた場所に戻るときってのは、その目的が無事に果たされたとき。俺が汐華さんを利用したことにも目的があったように……ね」


「…もく、てき…?」


「世の中、目的もなく動く人間なんか少ないってより居ないだろ。俺だって0に入った元々の理由は……生まれたばかりの俺を捨てたクソみたいな母親を見つけ出して、さっさと殺したかったからだよ」



ぽろっと落ちた、一筋。

言葉のなかにシロちゃんの冷酷さと優しさ、そして千石くんの孤独が見えたからだ。


私たちとおなじ目を、彼も持っていた。