廊下の突き当りにあるベンチへ到着すると麻子はまだ石化している美加をそこへ座らせた。
「すごいじゃん美加の力! これって十分使えるよ!」

目を輝かせながら美加の肩を掴んでブンブンと揺さぶるので、美加はようやく我に返った。
「え? い、今なにがあったの?」

大翔の体を抱きしめてしまったことが衝撃的すぎて、あまり覚えていない。
ついさっきの出来事なのに、記憶にモヤがかかっている。

「もう! 今からそんなんでどうするの? これからどんどんラブハプニングがあるっていうのに!」

麻子の脳内ではすでになにかの物語が出来上がっているようで、さっきから腰をくねらせて興奮している。

「名付けて、ラブハプニング大作戦よ!!」
麻子は鼻息荒くそう言い放ったのだった。