30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです

ベンチは一瞬カタリと音を立てて動いたけれど、そのまま止まってしまった。
「重たすぎるのかな?」

麻子が残念そうな顔をして近づいてくる。
美加は自分の右手に視線を向けた。

さっきまでと同じように念じてみたはずだけれど、ベンチには通用しなかった。
麻子が言う通り、対象物の重さが関係しているのかもしれない。

「少しだけ、動け!」
試しにそう念じて見ると、ベンチはまたカタリと音を立てた。

大きなものは動かせないけれど、少しだけ動かることはできる。
ということみたいだ。

なんだか微妙な魔法だな……。