30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです

☆☆☆

「今度は顔が真っ赤だけどどうかしたの?」
隣の麻子が眉を寄せて質問してくる。

今日は麻子のこの表情をよく見る日だ。
それほど今日の自分はせわしないということか。

「べ、別になにもないよ」
答える声が裏返り、笑顔がひきつる。

「美加って嘘つくのが超絶下手だよね」
今度は呆れ顔になって言われて美加は渋々薄情することになった。

「へぇ、稲尾さんと間接キスねぇ」
「ちょっと、声が大きいよ!」

この部署にも稲尾ファンの女性は何人かいる。
その子たちに聞こえたら後が怖い。