30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです

美加は稲尾のことを意識している女子社員の1人だった。
まっすぐ相手の目を見て話すこともできず、うつむいてしまう。

「やっぱり体調悪いんじゃない? 無理してない?」
「だ、大丈夫です」

まさか二日酔いが原因だなんて口が裂けても言えない。
それに、体調不良に気がついてくれて、更に気遣ってもらえただけで天にも登る気持ちだ。

「そ、それじゃこれで失礼します」

ふたりきりの空間に耐えきれなくて頭を下げて給湯室を出ようとしたとき、美加がセットしていたコーヒーが淹れ終わった。

「いい匂いだな。君がブレンドしたの?」
「え、あ、はい……」