「あう……、み、耳はやめてください……っ」

「お、耳から測った体温が、いつもより0.012度高い!」

「……そういうのを〝誤差の範囲内〟っていいませんか」


私、翠々香(すずか) ねね。
高校一年生、16歳、帰宅部。

夜になるとウサギの耳と尻尾が生えてくる「半獣人(はんじゅうじん)」。

日中は人間、夜はうさぎ人間という、なんとも奇妙な生態をしています。

といっても、生まれつきじゃなくて。

高校に入って初めて迎える冬。
今から二か月前。

急に体がしんどくなったと思ったら、耳と尻尾が生えていた。

その時、たまたま通りかかった、このヘンタイ研究者に助けられた……というわけなのです。


「ヘンタイなんてひどいなー」

「だって、本当のことじゃないですか」


今日の研究が終わり、いつものココアを作ってくれる先生。

名前を、架千(かせん)夜宇(よう)。
私より六つ年上の22歳。

獣人の研究を行っている、珍しい研究者。