「ただいま帰りました。」
「おかえり、陽」
お屋敷に帰りまっすぐお嬢様の部屋まで行って声を
かけてから自室へ。
学ランから運動着に着替える。

廊下でお嬢様とすれ違う。
「お嬢様、行ってきますね」
「うん、気をつけて」
「はい」

平日、学校から帰ってすぐに体術の訓練をする。
もしもの時のために。
相手は執事の筆頭。
歳は32で物腰は柔らかいがすごく強い。
お嬢様含め、みんなリーダーと呼んでいる。

リーダーはまだ来ていなくてホッとする。
「おまたせ」
「いえ、全然。よろしくお願いします。」

言った途端に仕掛けてくる。
すぐに反応して対応する。様々な角度、
腕や足を狙った攻撃、フェイントもかけられた。

気をつけていても隙はある。
足払いをくらって地面に押さえつけられる、
「ぐ、」

その後も何回も挑んで夕方になった頃。
「最初の頃に比べたらずっと動けるようになったな」
「ありがとうございます」
「あの頃はずっと転がしてたからな。
でも受け身はうまかったな」
「あの頃は学校の体育しか運動していませんで
したから」
「でも運動神経は悪くなかったな」
「お祖父様から受け身だけは嫌というほど
教わりましたから」
「確かにやりそうだ」
リーダーは笑っていた。  

「そういえばリーダーってずっとここにいますよね?いいんですか?」
「なにがだ?」
「前にお祖父様から専属執事は主人とずっと一緒にいるって聞いたので。」

リーダーは健(たける)様、
お嬢様のお父様の時からいる執事だ。
旦那様は仕事でほとんど帰らない。
帰ってくるのお嬢様の誕生日とお正月くらい。
お祖父様の引退と入れ替わりで旦那様と一緒にいた
リーダーは屋敷に戻ってきた

「健(たける)様から頼まれているんだよ。
屋敷を頼んだって」

「お嬢様ただいま戻りました」
「お疲れ様」
また部屋の前で声をかけて
部屋に戻って燕尾服に着替える。

宿題をしてから予習をする。
一通り終わって時計を見ると20時。
(お嬢様は夕食の時間が終わった頃かな)

お嬢様のお夕飯の時間は19時30分。
厨房を覗くと司さんは後片付けをしている。

朝と同じ場所に置いてある夕食をいただいて
片付けの手伝い。

お嬢様が入浴を済ませたらしばらく話し相手をする。
基本学校であったことを話す。
(そこしか話すことないしな)

夜、お嬢様と入浴している間、急いで自分もお風呂。
食堂の奥にある大浴場。
部屋にも備え付けのシャワーがあるが大抵はこっちで済ます。

その後、お嬢様の様子や予定、連絡事項などを
メモしてリーダーに提出して就寝。

その後も使用人は集まって話し合いをするらしいが、
俺はまだ中学生。早く寝るために唯一メモが
許されている。