両手を伸ばしてせまってくるお兄さんに、にこっと笑いかけて腕を広げようとすると。

 バッと、ステージのはしからなにかが飛び上がって、こっちに向かってきた。




「えっ?」




 私とお兄さんのあいだに割って入ったのは、金色の髪のひと。

 ちらりと見えた顔はサングラスでかくれていたけど…。




「ぐぇっ」




 せまってくるお兄さんを止めて、客席のほうへとひきずっていくその姿に、出会った日の姿がかさなった。

 あの背格好、まちがいない…!

 ぶじだったんだ、来てくれてたんだ!


 私は心の奥底から浮かび上がってくる笑顔を抑えることができずに、ボディーガードさながらのその背中へ、声をかけた。




「ありがとうっ、お兄さん!」