マスク越しににこりと笑って、足を進める。

 でも、うしろから腕をつかまれた。




「きみ、リアナちゃんに似てるってよく言われない?」


「離してください…っ!」




 腕をふって逃げようとすると、がしっともう片方の腕までつかまれてしまって、う、とうしろに下がる。




「っていうか、リアナちゃん本人だったりして…!?」


「まさか…アイドルがこんな時間に1人で出歩いてるわけないじゃないですか。おじさん不審者みたいですよ、離してもらえませんか?」


「あぁ、ごめんねぇ」




 腕をつかむ手が離れて、いまがチャンス!と走り出した。

 うしろからおじさんの声が聞こえるけど、無視して家に逃げる。

 心臓が、ばくばくとさわいでいた。


 ナイルさん、助けに来てくれなかった…っ。