「こんばんは」




 夜になってうちに来たナイルさんは、にこりとほほえむ。

 玄関の扉を閉めると、さっそくぎゅっと抱きしめられて、うれしはずかしな気持ちが湧き上がった。


 …ん、うれしい?




「リアナ。今日は覚悟して呼んだの?」




 ささいな疑問を吹き飛ばす、つやっぽい声に心臓がどくりと跳ねて、一瞬で顔が熱くなる。

 ナイルさんがたまに私を呼び捨てにするの、心臓にわるい…っ。




「ち、ちがいますっ、こっそり会える場所がうちしかないから、しかたなく…っ!」


「ふふっ、そっか。でもこれくらいは許してくれる?」




 ナイルさんは想像よりもあっさりと私を解放した。

 でも、私の顔を見て目を細めながら、ぐっと顔を寄せてくる。

 ちゅっと、私の唇はまたナイルさんにうばわれてしまった。