「はーい」
ふたたび鳴ったインターホンに応えるように、玄関の扉を開ける。
黒い髪にオニキスのような瞳をしたオウキくんは「ほら」とストールを差し出した。
「車のなかでリラックスするのはいいけど、忘れ物するなよ」
「ごめんなさーい…」
私はベージュのストールを受け取って、ちらりとオウキくんを見上げる。
変なところないよね…?と内心はドッキドキ。
「はやく夕飯食べて、風呂入って寝るんだぞ」
「わっ。もー、わかってるよぉ。子どもじゃないんだから髪ぐしゃぐしゃにしないで」
「いつもは頭なでてって言ってくるくせに」
ふっと笑うオウキくんに、ちょっとはずかしくなる。
それはそれ、これはこれだもん。