「まぁ、そういうことを心配される年にはなったのよね」
「だねぇ。でもさ、僕思うんだけど。孤独死って言うけど、結局誰かと住んでたってさ。一人でいる時に倒れたら同じじゃない？」
「まぁ……そうよね。ただそれに気づいてくれる人がいるかって話でしょう」

　それは、実際そうだろうと思う。

　確かに今、救急車を呼ぶような事態になったら、一体誰に連絡したらいいのだろう。母？　いや、暁子か。同性の友人が最もいいと思ってしまうが、彼女には彼女の生活がある。あまり迷惑もかけられない。うぅん、と顎を揉んだ。

「うぅん。そうすると、恋人でもいいよね。もっと言えば、定期的に会ったり、連絡を取ったりする友人でもよくない？　この人とは毎日必ず連絡取りますって人がいたらいい気がする」
「あ、確かにそうだ。結婚じゃなくっていいよね、それなら」
「ね、ね？　すぐに異変に気付いてさ。駆けつけてくれる相手がいればいい気はする。夫婦じゃなくて、恋人でも十分じゃん」

　恋人、か。あれから、恋愛なんぞ捨ててしまった。人を好きになったり、なられたり。そういった行為自体を信用できなくなってしまったからだ。でも宏海が今言うように、そういう相手がいると示せればいい。結婚なんてしなくたって十分じゃないか。

「そう言うけど、宏海は今、カノ……恋人とかいないの？」
「ん、いないよ。いい感じになった時はあったけど、気付けばそれも十年前だ」
「なるほど……じゃあさ、私たち付き合わない？　結婚でもいいけど」

　凄くいい案だと思った。だってもう、愛なんていらないんだから――