そんな優しい声で話さないで。
子供扱いされているみたいで。
余計に悲しいから。
「由花」
間宮さんが私の頭を撫でる。
「やめて」
と、私はとうとう涙をこぼして、間宮さんを見た。
「やめてよ、優しくしないでよ。好きだから、余計に悲しいんだって……、わかってよ」
こんなの、聞き分けのない子供みたいで。
自分自身に嫌気がさす。
うつむいて。
7センチのハイヒールを見た。
社会人の、大人の女性になれると思っていた。
ハイヒールを履いたら、背筋が伸びたから。
コツコツ響くヒールの音に心が踊って、可愛くなれたつもりだった。
……でも。
こんなの、違う。
どんなに願っても、違う。
素敵なハイヒールを履いたところで。
私、大事なことを飛ばしてしまったみたい。
階段を、一段飛ばししちゃったみたいに。
大事なことを置き忘れたまま。
「由花、お願いだから話そう?」
間宮さんが私の肩にそっと触れる。