一段飛ばしのハイヒール


「待って、どこ行くの?」
と、間宮さん。



私は黙って、ハイヒールを履く。



「帰るの?待てって、まだ話は終わってない」

「終わったじゃん。女子高生とは付き合えないんでしょう?」

「は?待って、なんでそうなってんの?」



間宮さんが私の腕を掴む。

それでも私は振り返らなかった。



ううん、振り返れなかった。



だって。

間宮さんの顔を見てしまったら。

絶対に泣いてしまう。



掴まれた手を強引に振り払って、私は玄関のドアを開けた。

エレベーターホールに行って、エレベーターの呼び出しボタンを押す。



「待てって、由花!」



間宮さんが追いかけて来る。



「もういいじゃん、謝ったじゃん」

「良くない」

「もう終わったんじゃん、別れたいんでしょう?」



ほとんど涙声だった。



間宮さんはそれに気づいて、
「部屋に戻ろう?ちゃんと話したい」
と、優しい声で言う。