一段飛ばしのハイヒール


社会人だと思って付き合った恋人が、まだ高校生なんだもんね?



「怒った?」

「……」

「怒ってる、よね?」

「……そこまでまだ考えられない、っていうか」



間宮さんは自分のネクタイを外した。

少し乱暴な手つきだったので、やっぱり苛立っていることがわかる。



「好きな気持ちは、嘘じゃない」



私は伝えた。

このことは、伝えておかないといけない。

嘘を吐いたけれど、嘘の中にだって本当はあるんだ。



間宮さんへの気持ちは、疑われたくなかった。



「……ちなみに聞くけど」
と、間宮さんはうつむいた。



「なんで社会人だって嘘吐いたの?」

「女子高生って知ってたら、付き合ってくれた?」

「……」



私の質問返しに、間宮さんは黙った。

その沈黙が、答えの全てだと思った。



「好きな人に近付きたくて、嘘吐いたの。本当にごめんなさい」



私は間宮さんを通り過ぎて、玄関に向かう。