傷だらけの少女は、初恋相手の幼馴染にドロ甘に溺愛される。

なんとなく聞いてみた。

すると、士綺くんはふわりと笑った。



「どっちだろうな。俺はタイプとかねぇから」



ドキリとした。

雲から出てきた月が反射して───士綺くんのシルバーの綺麗な髪が輝いた。

瞳は今まで味わったことがないくらい甘くて。

───溶けて、しまいそう。



「どうした?」

「う、ううん! それより、士綺くんはもし願いが1つ叶うとしたら、どんなことを願う?」

「はぁ? なんだよソレ」



これもなんとなく聞いてみた。

私の願いは、過去に戻ること。

過去に戻って、士綺くんに伝えたい。

───『好きだよ』って。



「そうだなー。……俺は過去に戻る」

「え?」



驚いた。まったく同じ回答で。



「俺は過去に後悔した。過去に戻って、過去の俺をぶん殴る」



……違った。

士綺くんの過去に戻りたい理由は、私とは違って、重くて。

───後悔。

私も、後悔でしか生きてこなかった気がする。