聞いた瞬間、私は腰を抜かしてしまった。

それを支えるように、士綺くんが手を貸してくれる。



「いやぁ……っ!」



分かっていても、頭は言うことを聞いてくれない。



「椿月、落ち着け」

「……嫌。行きたく、ない」

「落ち着け!」

「っ……!」



士綺くんに肩を揺らされ、強い口調で言ってくれたおかげで、戻ってこれた。



「しっかりしろ。大丈夫だ。……アイツはいない」

「え……」



アイツって……“あの人”のこと、だよね?



「大丈夫だ、いないから。憐夜たちも、詮索する気はない」

「……分か、った」



いないなら……大丈夫、大丈夫……。

そう自分に言い聞かせながら、少し震える脚で立つ。



「大丈夫か? 抱えるか?」

「い、いや……大丈夫だよ」