【side士綺】
「士綺くんは私のこと、嫌い、なんでしょ? いいよ……無理やり、話しかけなくて……」
「っ……」
椿月の言葉に俺は、何も言えなかった。
「もう、やめてください……!! ごめんなさいごめんなさい……!!」
倉庫に入った途端、響いた椿月の声。
「椿月……!?」
「士綺、くん……」
椿月が出て行き、俺は男の事を憐夜たちに任せた。
一体……何があったんだ……ッ!
椿月は電柱の下で震えていた。
そして……。
「士綺くんは私のこと、嫌い、なんでしょ? いいよ……無理やり、話しかけなくて……」
「っ……」
何も言えねぇ。
それを言ったのは、事実だ。
“俺の嘘”が、深く傷つけていた事を知った。
知った途端、俺は自分自身を責めた。
“椿月のため”だと思った事が、何よりも椿月を傷つけていた。
「だい、じょうぶ、だから……っ。鬼龍の皆さんにも、謝って、おいて……」