「っ……」
体が、動かない……。
ポタリと、涙がコンクリートに染みる。
やっと……忘れられたと思ったのに……。
やっと……逃げられたと思ったのに……。
せめて……家に帰らなきゃ……。
……誰もいない、家に。
そう思い、必至に体を持ち上げる。
でも、足は言う事を聞いてくれない。
「独り……ぼっちだ」
信じてた。ずっと。
いつかきっと、私のことを認めてくれる人がいるって。
いつかきっと、愛で包み込んでくれる人がいるって。
結局……願望でしかなかった。
「寂しい、よ……っ」
誰かお願い……助けて……。
「椿月……!!」
───え……?
何回も聞いた声。
───士綺、くん……?
走って来たのは、士綺くんだった。