傷だらけの少女は、初恋相手の幼馴染にドロ甘に溺愛される。







ただ、恐ろしくて。

何を言って、何をしてたかも思い出せないくらい。



「つーちゃん、大丈夫?」



ただ、冷静になると思い出してきて。

恥ずかしくて。



「ご、ごめんな、さい……!」



震える足で立って、倉庫から出た。



「つーちゃん!! 待って!」

「椿月!!」



憐夜くんと士綺くん、の声が聞こえても、あそこに“あの人”がいる、その事実のせいで足が勝手に動く。



「嫌……! やだ……!!!」



そう小さく、震える声で勝手に出る言葉。

そして、暗くなりかけた空には、薄く月が浮かんでた。



「嫌……」



せっかく忘れられたのに。

せっかく……友達ができたと思ったのに。

また全部……壊されて。



「もう、嫌……」



そう、電柱の灯りが点いた下で呟いた。