「おかあ、さん……」

「椿月!」



お屋敷に着いて部屋に入ると、お母さんがいた。

すぐに駆け寄ってきて、抱きしめてくれた。

でも、士綺くんの顔を見て……。



「っ、椿月!! なんで士綺君がいるの!? まさか付き合ってないわよね!?」



お母さんは昔、士綺くんとも一緒に遊んだこともあって、ショックも大きかったらしい。

でも、怒りの方が勝ってしまって……。

士綺くんの恨み言を言っていた。



「あなたもどの面下げて来たのよ! 再開させてくれたのも、ここに住まわせてもらってるのもありがたいけど、明日出て行くわ」

「……おかあ、さん」



伝えたら、どんな表情をするだろう。

最低と罵られるかもしれない。

裏切り者と言われるかもしれない。

でも、士綺くんのことは、伝えなきゃ。



「椿月、早く準備するわよ。あなたたちも帰って。もう挨拶はしたでしょう。椿月、足大丈夫? だから───」

「お母さん」



静かな声で、お母さん言葉を遮った。