士綺くん、気づいたんだ。

腕が、青紫に変色してること。

しかも、士綺くんになら分かったはず。

───毒を、入れられたって。



「てめぇ!! 椿月に何した!!」

「はっ、“百獣の王”とも呼ばれたお前がまさか1人の女に惚れ込むなんてなぁ!!」

「ああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

「椿月!!!」



ポタリ、またポタリと、血が流れる。

腕に、痛みが走った。

注射をされた腕とは反対の腕。

ナイフで、刺された。



「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

「天鬼てめぇ!!!」



どれだけ刺されて、叩かれて、殴られたら私は楽になれるの?

私は楽になることさえ、許されないの?



「はっ、そんなにこの女が大事か? でもなぁ、コイツは知らねぇみたいだぜ? お前がコイツの親を奪ったってなぁ!」

「……ぇ?」

「っ……」



天鬼岳の言葉に、士綺くんは息を呑んだ。

な、に? どういう、こと……?

そう思うと同時に、身体から力が抜けた。