傷だらけの少女は、初恋相手の幼馴染にドロ甘に溺愛される。

一瞬、何を言われたのか分からなかった。

突然、どうして……。



「っ、悪い。言い方が悪かった。……緊急事態なんだ。頼む、一旦家に帰ってくれ」



いつもより真面目な眼差しに、私はおかしいと思った。

まさか、彼女が何か……?

……ううん。今は私といたし、何より士綺くんがここまで焦るとは思えない。

なら……鬼龍のこと?



「どうしたの?」

「……今は言えない」



返答は曖昧なもので、今言うつもりはないのだと察した。

……とにかく、今は従おう。



「分かった。普通に帰るね」

「悪い。気をつけてくれ」

「あははっ、不審者が出たんじゃあるまいし」

「……気をつけろ」



冗談を言って和ませようとしたけど、士綺くんの視線は相変わらず真面目。



「バイバイ、士綺くん」

「ああ。気をつけろよ」

「うん」