士綺くんがため息をついた理由が分かった気がする……。

士綺くんは顔を覆い、俯いている。



「椿月、余計な事は言うな……」

「い、いや……まさかここまで士綺くん限界オタクだとは思わなくて……」



今まで雰囲気で士綺くんのこと好きなんだろうなぁって思ってたけど、まさかここまで限界オタクだったとは……。



「つーちゃ〜ん。涼クンは小さい頃から一緒にいるせいで限界オタクになっちゃったの〜。一回余計なこと言うと面倒くさいんだよー」

「ご、ごめん……」



でも、士綺くんが慕われてるのって面白い。

昔から、人を惹きつけなかったから。



「ほらつーちゃん! これ食べて〜」

「……んっ! 美味しい〜」

「でしょでしょ!? 次はこれ〜」

「憐夜、椿月に近づくな」




───私はすっかり忘れていた。

地獄は、終わらない。

そして、その地獄が目の前まで迫っていることも。

───私はまだ、本物の地獄に突き落とされることを、知らない───……。