傷だらけの少女は、初恋相手の幼馴染にドロ甘に溺愛される。

ちょっと外に出て会えば、『総長の女だ』『やっぱり付き合ってたのかよ……!』とコソコソと話される。

まあ、付き合ったのは事実だけど……。

とにかく、周囲の反応は変わった。

憐夜くんたちは変わらないけど、士綺くんは見たこともない甘さ……。



「どーした椿月〜? なんや意識旅行中か〜?」

「えっ? いや……! ただ、やっと復帰だな〜って」



結蘭ちゃんに目の前で手を振られて、回想から戻ってきた。



「せや、獅子堂ホンマに甘々やな〜。見舞いん時、椿月のこと抱きしめてたし」

「うう……。忘れてください……」



結蘭ちゃんと憐夜くんたちがお見舞いに来てくれた時……士綺くんに抱きしめられてて……。

本当、見られた時は死にたかった……。



「あの時の真っ赤な顔可愛かったな〜。獅子堂が惚れんのも納得やわ〜」

「ほ、惚れるって……」



まさか士綺くんと14年間も両片想いだったなんて……。



「せや! ちょっと玲音に用事あんねん! 少し出るわ〜」



玲音くんに用事……?



「分かった〜。行ってらっしゃい」

「ほな行ってくるわ〜」



手を振って出て行った結蘭ちゃん。

1人になると……いろいろ思い出してしまう。

あの時も……呼び出された、から。

でもそんなの、気にし過ぎだったみたい。



「椿月ただいま〜」



すぐに結蘭ちゃんは戻ってきた。