「はぁ〜!? こうでもしなきゃ士綺クン動かないでしょ〜!? 僕のありがたみ分かってよ!」

「お前のどこに感謝しなきゃいけねぇんだよ」

「はぁ? サイッテー!」



椿月は俺らが言い合ってる中、玲音に話しかけていた。



「玲音くんの従妹の結蘭ちゃんがこれ着付けとかしてくれたの! 結蘭ちゃん、とってもセンスいいんだねっ」

「……そうか」



……クソッ。このお人好しが。

誰にでもいい顔してんじゃねぇ。



「あー。はいはい。士綺クンが嫉妬するから程々にね? つーちゃん」

「え? 士綺くんが嫉妬……?」

「憐夜、それ以上言ったらシメるぞ」



どいつもこいつも余計な事言いやがって。



「おお怖。それより早く! 花火始まる前に屋台全部回らなきゃ!」

「ぜ、全部?」

「もちろんっ! つーちゃん、甘いもの好きでしょ?」



“甘い物”で釣られた椿月。



「かき氷にカステラにりんご飴も……!」

「椿月、餌付けされるな」

「え? 餌付け?」



ニコニコ笑顔で問いかけてくる顔は、抜群の破壊力があった。

クソ……ッ。なんでだよ……。



「……可愛すぎだろ……」

「え? どうしたの? 士綺くん」

「……なんでもねぇよ」