『アンタなんかもういらないわよ』

『待って……お母さん!』



必死に伸ばす手。

行かないで……お母さん……っ。



「おかあ、さん……!」



目を覚ますと、いつも通りの朝。

薄っぺらいカーテンから差し込む光。

体をムクリと起こすと、ポロリと涙が溢れた。



「っ……う」



夢を思い出せば思い出すほど、涙が落ちる。

パジャマは汗でビッショリ。

枕は涙で濡れている。



「……お風呂、入ろう」



そろそろ、忘れなきゃいけないのに。

お風呂に入って、学校に行く準備をする。

私立天霧(あまぎり)学園高等部三年、百瀬椿月(ももせ つばき)と書かれた生徒手帳を鞄に入れる。



「うわ、才女とか言われてる奴が来た〜」

「なんか『私、他の奴とは違います』感出しててウザイよね」



学校に着けば、こうやって罵倒を浴びる。

そんなの……思ってないのに。