翌朝、目が覚めて鏡を見ると、別人に見間違えるほどに目が腫れた自分の顔が映っていた。

………幸人の、私の最後の記憶がこの顔はダメね。ものすごいブスだわ。

記憶に、残してくれるかも分からないけれど。

そんな思いで、化粧をいつもよりしっかりとする。もちろん、腫れた目元もできるだけ隠した。

服も、できるだけ良いのにしましょうか。
最後くらい、少しでも幸人に釣り合うように。



今は9時。
朝ご飯は、食欲ないからヨーグルトだけ食べようかしら……。

パパっと食べた後、スマホを開いた。

“アルバム”で、幸人との思い出を振り返る。


カフェでのツーショット。

1ヶ月記念日にくれた髪飾り。

渋々カメラに顔を向けてくれた幸人。





———— ぽたっ  ぽたっっ



馬鹿ね。

別れる前に、振り返るなんて。

せっかくした化粧が、落ちるじゃない。

時間をかけて選んだ服に、染みが広がっていってるじゃない。

幸人に、「別れましょう」って、言えなくなるって、分かってたでしょう??


………ホント、馬鹿な女。