少女は約束通り、中村さんに連れられて生徒会室へと向かった。

本郷先輩がどんな顔をするのか、想像するだけでもゾッとした。

残された私と長谷川さんは、長谷川さんがノートを書き上げるのを待ってから、美術準備室を出た。

「ごめんねー。付き合わせちゃって」

「いえ。生徒会室で書かないんですか?」

「私はね、いつも七不思議の現場でノートをまとめるの」

「どうして?」

「雰囲気もそうだし、情緒や対象者と話した感情とかリアルに思い出せるから。できるだけ対象者の気持ちをきちんと伝えたいから」

「へぇ。いいですね」

「そう?ありがと。砂雪ちゃんも良かったよ」

「私?何もしてないですよ」

「あの子に言ってあげたこと。救われたと思う」

「そうですかね…」

「うん。絶対に。素敵な恋愛ができるといいよね」

「はい。ほんとに」

別棟を出たらもうすぐ六時になる頃だった。
元々曇っていた空はすっかり暗い。
雨はまだ降っていなかった。

降りそうで降らないグズグズとした空がもどかしい。

「砂雪ちゃん、傘持ってきた?」

「降りそうですよね。持ってきてないです」

「早く報告して帰ろ!」

「そうですね」

私と長谷川さんは生徒会室まで走った。

あの子がちゃんと本郷先輩に許してもらえてたらいいな。