カナデくんが鈴城さんのほうへ顔を向けた。

ステージの下でカナデくんを見て頷いた鈴城さんが、ステージに上がってきて、カナデくんの隣に立った。

なんで二人が…?

だめだ…疑っちゃだめ。
私はもう大丈夫なんだから…。

そう思うのに心臓がバクバクして、手汗で手の平が湿っているのを感じた。

「皆さん。生徒会長、本郷 カナデとしての最後の挨拶です」

「最後…?」

私の隣で長谷川さんが呟いた。
中村さんも戸田さんも固まって、カナデくんを凝視していたし、私も声が出せなかった。

「夏休み中、何度か学園にも赴き、諸先生方にも相談させていただき、話し合いを重ねて参りました。そして、生徒会長、本郷 カナデと副会長、鈴城 みなみは生徒会を早期辞任いたします」

体育館全体が驚きの声や悲鳴で包まれた。

生徒会の先輩達も立ち上がってうろたえた。
私だけが動けずに、座ったままジッとしていた。

そんなこと聞いてない。
あの日のSNSに投稿されていたことも、辞任することの話し合いだったの?

じゃあ…カナデくんの部屋で見たあの組織図は…。

「皆さん、お願いします。僕からの最後の挨拶です。どうか、ご静粛にお願いします」

体育館は再び静寂に包まれた。
けれど混乱が無くなったわけではないことは見てとれた。