モネの部屋のドアには小学校の図工の授業で作った木製のプレートが掛かっている。

モネって文字の周りに、木で作ったリボンとかクマの顔の形とかがくっついていて、モネの雰囲気に似合っている。
小学校は違うところだったけれど、私も授業で作った記憶がある。
でも私はそのプレートをどこにしまったか覚えていない。

ドアをノックしてモネを呼んだ。

「モネ。砂雪だよ」

「サユちゃん!入って!」

ドアを開けたらベッドのヘッドボードを背もたれにしてモネが座っている。
私に手を振る姿は思っていたよりも元気そうで安心した。

「どう?ちょっとはマシ?」

「熱はもう下がったの。心配かけてごめんね」

「ううん。いつからしんどかったの?気づかなくてごめん」

「サユちゃんのせいじゃないよ!今日ね、サユちゃんが来てくれて嬉しかった」

「それなら良かった」

部屋がノックされて、モネのお母さんが紅茶とクッキーを持ってきてくれた。

「ごゆっくり。あ、でも風邪が移るといけないからくっつき過ぎたらだめよ?」

「もー、ママ。幼稚園児じゃないんだから」

部屋を出ていくモネのお母さんに会釈して、モネに向き直った。

「あのね、今日モネと学校で会ったら悠太とのことちゃんと話そうと思ってたんだ。だから今度話すね」

モネが掛け布団の上で組んでた手の平を伸ばして私の腕を掴んだ。

「今聞きたい」

「今?でもしんどいでしょ?」

「大事な話だから。ちょうど二人だけで話ができるでしょ?」

「そう?ありがと」

私はモネに一部始終を話した。

悠太とデートした日のこと。
本郷先輩がずっと悠太に敵意を向けていて、たまたま悠太が私の音声を流しているところに遭遇したこと。

先輩が悠太を呼び出してシメたこと。
悠太に言われた言葉も、その後教室で悠太の友達たちから受けた謝罪や最後の悠太との会話も。

それから本郷先輩と出会っていた過去のことも話した。

私の話にモネは声を荒げて怒ったり泣きそうになりしながら私に抱きついたりした。

「絶対に許せない。今すぐにでも殺してやりたいよ!」

「モネはそう言うんじゃないかなって思ってた」

笑った私に、モネは「無理に笑わなくていいよ」って言った。

「モネ、ありがとう。でもね、もう本当に大丈夫なの。モネもだし、生徒会の先輩達も本郷先輩も私のことを想ってくれてるんだなって実感するきっかけにもなったし。何より…悠太はもう私の人生の中には居ない。いつまでも同じ場所でウジウジしてるのは性に合わないよ」

「サユちゃんは強いんだね」

「そう見える?よく言われるの。でも私だって強いわけじゃない。本当は死んでしまいたいくらいショックだった。悠太のこと、本当に好きだったから」

「うん…」

「でも今はね、今も私のそばに居て、一緒に本当の幸せを教えてくれる人達を大切にしようって決めたんだ」

「サユちゃん、その中にモネは含まれてる?」

「なに言ってんの?当たり前じゃん」

「そっか」って言って俯いたモネはちょっと寂しそうだった。