明日から、ギャルさんはたぶんもうここには来ない。

ずっと私に敵意を剥き出していたあの子に私は何も言ってあげられなかったし、本郷 カナデという生き甲斐を失くして、これからどうやって生きていくのかは分からない。

ただ、新しい恋を見つけたり、
まっとうなバイトをしていろんな人と出会ったりしながら、自分が学園に侵入してた頃を「バカみたい」って笑える日がくればいいなって思った。

私と本郷先輩が帰ってくるなり、鈴城さんが私以外の先輩達を全員生徒会室から追い出した。

「はいはい、早く帰ってねー。これ以後、立ち入り禁止!」

「なんだよみなみ。どういうこと?」

「いいから!カナデもさっさと帰って!」

「砂雪は?」

「砂雪ちゃんと話があるの!立ち聞きしたら殺すから!」

「砂雪ちゃーん。何したのー?」

先輩達がニヤニヤと私に視線を向ける。

「えー…やっぱ私、お説教されるんですかぁ…」

「あはは、ドンマイ!」

「いいから、いいから、じゃあねー!おつかれー!」

強引にみんなを追い出した鈴城さんは、ドアに鍵をかけて、「さてと!」って私に向き直った。

「座って!いつものジャスミンティーでいいよね?」

「私がやります」

「いいの、いいの。今日は私が誘ったんだから。ごめんね、おしゃれなカフェにも砂雪ちゃんと行ってみたいんだけど、外は誰が聞いてるか分かんないしさ」

「ですね…。鈴城さんもけっこうマークされてますから」

「なにそれ、怖い」

鈴城さんは笑いながらティーカップを二つ、テーブルに置いた。
鈴城さんのカップからはコーヒーの香ばしい香りがした。