「先輩。私…ね、失恋したんです」

「知ってる」

「誰のせいですっけ?」

「お前のせいだろ」

「私の?私、自分のせいで失恋したんですか?」

「簡単に肌見せたりするからだろ」

「あはは…ですね」

「最初から俺だけにしとけばよかったのに」

「ほんと自信家」

「あいつも酷いよなぁ。何が二度と関わるなだよ。自分が犯罪まがいのことしてたくせに」

「そうですね」

「最初はさ、無理矢理お前のこと手に入れようって思ってた。だから正しい恋、の忘れ方を教えてやろうって思ってたんだけどさ。あいつも正しくなかったな」

「なんですか、その大喜利みたいな言い回し」

「今度は正しく、恋の忘れ方を教えてやるよ」

「正しくないくせに」

「なんで?」

「変なことばっかするくせに」

「こんなこと?」

触れるようなキスに、もう必死でやめてっていう理由も無くなったなぁなんて他人事みたいに思ってしまった。

「先輩」

「ん?」

「私の恋を壊してくれてありがとうございます。あのまま何も知らずに悠太から離れられずにいたら、私の人生終わってたかも。…って大袈裟ですかね?」

「砂雪の人生を救えて良かったです」

「ふふ。なんで敬語なんですか」

「砂雪にありがとうなんて言われるって思ってなかった」

首を振って、でも先輩と目を合わせるのはなんか恥ずかしかったからそっぽを向いて言った。

「やっと言えました。ありがとうって」

「あー…可愛すぎ」

耳の後ろにキスされてゾクってした。
自分の本当の感情なんて考えることすら奪われちゃいそう。