「ねぇ、私ってブス?」

「は?」

翌日。悠太と一緒に登校する通学路。
私の質問に悠太はきょとんとした。

いつも一緒に登校してるわけじゃない。
今日はたまたま会ったからこうして一緒に歩いているんだけど、私はまだ昨日のモヤモヤから抜け出せずにいた。

「どうしたんだよ急に」

「私さ、昨日初めての生徒会だったじゃん?言われたの、会長に」

「会長って、あの?」

「そう。本郷先輩」

「その…ブスって?」

「黙れ、ブスって言われた。質問しようとしたら第一声目にそれだよ?意味わかんなくない?」

「へー。思ってたより面白そうな人なんだな」

「どういう意味!?やっぱ私ってブスなの!?」

「違う違う。違うって」

立ち止まって恨めしそうに悠太を見る私の頭を、悠太はポンポンって撫でた。

「そういう意味じゃなくて。なんか噂だとさ、アンドロイドみたいな人じゃん」

「うん…まぁ…」

「そんなことも言うんだなぁって思っただけ。砂雪は可愛いよ。言ったじゃん」

「え?」

「忘れちゃった?」

「忘れて…ない…」

たぶん、忘れてない。
あの花火大会の夜の「可愛い」は、私に向けられてたってこと?

「あー、遅刻しそう。急ぐぞ」

悠太が私の手を引いて走り出す。
もっと続きを話したかったけれどタイムオーバーみたい。

私の心臓も、もうもたないみたい。

不思議。
あんなに嫌な気持ちだったのに、悠太は一瞬で上書きしてくれる。

私の好きな人は本当にヒーローみたいだ。