「えーっと、今日は順番に全部の衣装を着てみてね。衣装チェンジのタイムも測りたいから、本番と同じようにお願いします」
「はーい!頑張りまーす」

おどけたようにあみが言う。

もうすぐ始まるコットンキャンディのドームコンサート。
明日香はひと息つく暇もなく準備に追われていた。

コットンキャンディの新曲の衣装は、葵が明日香のデザイン画通りに製作してくれ、メンバーからも好評。
少し手直しをするだけで完成した。

同時進行でサザンクロスのドームコンサートの準備もあり、そちらは陽子に任せていた。

コンサートの日程は被らないようにずらしてある為、陽子も明日香もどちらの現場にも駆けつける予定だ。

明日香は両方のコンサートのセットリストを頭に叩き込む。

そんな中、映画の打ち上げの日がやって来た。

コンサートのリハーサルを終えた瞬は、明日香や陽子と一緒に会場のレストランへ向かう。
貸切、とプレートが掛けられたドアを開けると、既に大勢のスタッフが集まって楽しそうに盛り上がっていた。

あれからまだ2週間しか経っていないのに、もっと長く会えなかったような気がして、瞬も明日香も懐かしい面々との再会を喜ぶ。

「あすか!」
「健悟くん!久しぶり。元気にしてた?」
「うん!」

笑顔で駆け寄ってくる健悟に、明日香は破顔してハグをする。

「健悟くん、これ私からのプレゼント。撮影お疲れ様でした」
「え、なに?」
「駄菓子の詰め合わせだよ」
「やった!」

リボンで結んだ大きな袋を抱えて、健悟はぴょんぴょん飛び跳ねる。

「すみません、お気遣い頂いて。ありがとうございます」

母親が恐縮して明日香に頭を下げた。

「とんでもない!駄菓子なので、本当にたいしたものじゃなくて」
「でも駄菓子はこの子が一番喜びます。ありがとうございました」
「あすか、ありがとう!」
「ふふ、どういたしまして」

すると今度は、明日香ちゃん!と後ろから声をかけられた。
振り返ると、ヘアメイクの明菜と沙奈がにこやかに手を振りながら近づいて来る。

「わあ、久しぶり!お二人とも元気でしたか?」
「うん!でもなんだか寂しくて。撮影は大変だったけど、毎日みんなと会えておしゃべり出来て、今思えば楽しかったなって」

沙奈がそう言うと、明菜も頷く。

「本当に。私、なんだか燃え尽き症候群みたいになっちゃって。しばらく使い物にならなかったの」
「ええ?!明菜ちゃん、そうなの?」
「だけど今みんなに会えたから、また元気になった!」

あはは!と3人で笑い合う。

「映画のPR活動が始まったら、また会えるよね」
「うん!楽しみにしてる」