トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜【書籍化】

「楓は、いつかその息子が自分に危害を加えに来るかもしれないと感じていたんだ。そして俺にも話してくれなかった。いつも明るく笑っていた楓は、きっと俺に余計な心配をかけたくないと…。どうして俺はそんな楓に気づいてやれなかったんだ!」

悔しさにグッと奥歯を噛みしめると、瞬は顔を上げて須賀を見る。

「いいか、なんとしてもこの事件の真相を暴いてみせる。だが現警視総監が絡む事件だ。俺とお前だけで慎重に捜査を進める。まずはこのねじ工場の社長の息子が、今どこで何をしているかを調べるんだ。おそらく今は30半ばだろう。子どもの頃の言葉通り、警察官になっているかもしれない。名簿を調べよう」
「分かった。すぐに署に戻って調べる」
「ああ、頼む」

データベースを検索すれば、すぐに現役の警察官の名前はヒットするはず。
署に戻ると、早速ねじ工場の社長の名前を調べた。

釘沼(くぎぬま)か。珍しい名前だから、調べやすいかも」

そう言って検索をかけたが、30代の警察官にそんな名前の人物はいなかった。

「じゃあ、警察官にはならなかったのか…」

瞬は口元に手をやって宙を見据える。
そんな瞬に、須賀が話し出した。

「つまりこうじゃないか?死亡した誘拐犯がこの釘沼の息子だったんだ。警視総監に過去の過ちを認めさせようとして娘と孫を誘拐した。だがお前に追い詰められ、逃げられないと悟って自爆した」
「それなら、なぜ津田不動産の社長を殺害して容疑者Bとして犯行予告文を残したんだ?」
「それは単に事件を複雑に見せる為じゃないか?全く違う事件に繋がりがあるように見せかけて、捜査を混乱させようとして」
「俺はそうは思わない。きっと何か別の思惑があるはずだ。それにあの男が最後に残した言葉…」
「ん?なんだ?」
「…いや、別に。とにかくもう少し調べてみる」

すると須賀がため息交じりに言う。

「なあ、大輔。気持ちは分かるけど、今はとにかく大樹くんのそばにいてやれよ。お前だってゆっくり気持ちを落ち着かせた方がいい」
「大樹のことはちゃんと守る。これから病院に面会に行ってくるよ。だが、この捜査は続ける。必ず真相を明らかにしてやる」

そう言い残し、瞬は足早に部屋を出た。