須賀の運転するパトカーが埠頭に滑り込んでくる。
だが同じような倉庫がいくつも並び、どこに二人がいるのか判別がつかない。

『風間、目撃情報が入った。昨日の23時頃、1台のワンボックスカーが6番倉庫の横に停まっていたらしい。見かけた漁師が、珍しいと覚えていたそうだ』

無線から聞こえてきた上司の言葉に、瞬と須賀は顔を見合わせる。

「了解。すぐに6番倉庫に向かいます」
『踏み込むのは待て!応援が来るまでは動くなよ』

返事をせずに瞬は走り出す。
6と書かれた倉庫まで来ると、人目につかないよう隣との隙間に身を潜ませて中の様子をうかがう。
倉庫に窓はなく、中の様子をうかがい知ることは出来なかった。

「くそっ、応援はまだか」

須賀の声を聞きながら、瞬は入口に回り込んで隙間から中を覗き込んだ。
暗く殺伐とした雰囲気の倉庫内に目を凝らしていると、中からカタッと小さな物音が聞こえた。

瞬は入口の扉に手をかける。

「大輔、やめろ!」

その声を振り切り、瞬が扉を少し開けて中に身を滑らせる。
すぐさま姿勢を低くして物陰に隠れた。

そのまま少しずつ奥へと進んで行くと、やがてかすかに話し声が聞こえてきた。

「大丈夫よ、大樹。パパが迎えに来てくれるからね。もう少し頑張れる?」
「うん」
「いい子ね。ほら、ぎゅって抱っこしてあげる」

瞬は思わず目を見開く。

(楓、大樹!)

ついに愛する二人を探し出した!
はやる気持ちを抑えつつ、瞬は壁のガラクタに沿って二人に近づこうとした。