カットがかかり、チェックを待つ間、瞬は明日香に目をやる。

健悟や沙奈と楽しそうに話している明日香を見ていると、自然と心が安らぐ。

瞬は役の心理状態を引きずらないよう、いつの間にかカットの声がかかるとすぐに明日香に目を向けるようになっていた。

沙奈と健悟は入園式のシーン以降、瞬とは別撮りになり、最近は顔を合わせることもなかったが、時折こちらの現場に来て撮影を見学していた。

明日香ともすっかり仲良くなっているようだ。

健悟の頭をなでている明日香を微笑ましく見ていると、ふいに明日香が顔を上げてこちらを見た。

「健悟くん。パパですよー」

そう言って笑いながら健悟の手を引いてやって来る。

「健悟、元気にしてたか?」
「うん!おかしたくさんたべてた」
「ははは!そうか。また一緒に撮影するシーン、楽しみにしてるな」

すると、沙奈も近くに来てお辞儀をする。

「お久しぶりです、柏木さん」
「久しぶり。そっちの撮影はどうですか?」
「はい。シリアスなシーンが続くので、なるべく気持ちを切り替えて明るく雑談するようにしています。撮影も、私と健悟くんと犯人役の方、3人でのシーンばかりなので、時々皆さんに会いたくてこちらに来てます」
「そうですか。気晴らしになるなら、いつでも来てください。お互いもう少し頑張りましょう」
「はい、ありがとうございます」

明日香はそんな二人の様子を後ろからそっと見守っていた。