辛いシーンの撮影が続く。

明日香は、カットの声がかかると気持ちを入れ替えて明るく健悟や沙奈に話しかけた。

明菜も、沙奈達に汚れたメイクをしながら、わざと明るく会話する。

「沙奈さん。明日香ちゃんって、10年前からコットンキャンディの衣装さんやってるんですって」
「ええ?!本当に?じゃあもしかして『It's magic!』の衣装も?」

明日香が頷くと、沙奈はますます身を乗り出す。

「私、あの衣装大好きなの!似たような洋服買って、真似して踊ってたのよ」
「そうなんですね!嬉しいです」
「え、でも待って。10年前?明日香ちゃん、若く見えるけど、もしかして私よりもうんと年上の方なの?」
「あはは。一応、若いつもりです。って言っても27歳なんですけど…」
「ええー?私の一つ下?やだ、信じられない。じゃあ17歳であの衣装をデザインしたのね?」

沙奈はしきりに、信じられないと呟く。

「はあ、私もまだまだ頑張らないとなー。芸能界には、凄い人がたくさんいるのね」
「そんな!私は芸能人じゃないですよ?沙奈さんとは別世界の人間です」
「ううん、そんなことない。だってあんなにステキな衣装をデザインしたんでしょ?17歳の明日香ちゃんのデザインがコットンキャンディを輝かせて、私みたいな女の子を憧れさせたのよ。凄いわよ」

そう言って沙奈は、鏡越しに明菜を見る。

「明菜ちゃんも、今27歳なんでしょ?私と同年代の二人がプロとして立派にこの映画を支えてるのね。なんだか嬉しい!これからもまた一緒にお仕事したいな」
「ええ、私もです」
「私も」

3人は笑顔で頷き合った。