「こんにちは。オフィス クリスタルの小池です」
「あ、はーい!ご連絡頂いた衣装、全て用意してありますよ」
「ありがとうございます」

にこやかに部屋に通されると、ズラリと瞬のサイズの服が並んでいた。
明日香は瞬に似合いそうなカジュアルな服を選んでいく。

「やっぱり瞬くんといえばブルーですよね。でも今回は優しいパパって役なので、この薄いブルーのシャツにオフホワイトのサマーニットを合わせるのはどうですか?」
「んー、そうね。じゃあその2点は借りていきましょう。あとは、このVネックのネイビーのトップスも」
「これ1枚で着るんですか?かなり深いVネックで、身体のラインも出るタイトな作りですけど」
「ふふふ。これはね、子どもが寝たあと、夫婦で仲良くソファに座って語り合うシーンで着せたいのよー。大人っぽくて男らしいでしょ?コーヒーを飲みながら優しく微笑むと、妻がうっとりしながら肩にもたれかかってきたりして?ステキだわー」

陽子が両手を組んで目を細める横で、明日香は顔が真っ赤になるのを感じていた。

(しゅ、瞬くんが、奥さんにそんなことを?あー、ダメ。そんなの直視出来ない。大人の色気がハンパなくて、想像しただけで鼻血が出ちゃう)

「ん?どうしたの、明日香。鼻なんかつまんで」
「いへ、なんれもないれす」
「おかしなことやってないで、ほら、さっさと選んで。時間なくなっちゃうわよ」
「ふあーい」

あれもこれもと欲張ってレンタルし、次の訪問先へと移動する。

女性用の衣装を選ぶと、次は子ども服。
最後にファミリー向けのブランドを2ヶ所回って、さり気なくお揃いの親子コーディネートも選んでからその日はオフィスに戻った。