映画の仕事をこなす日々が続く。

明日香は陽子や助監督、時には監督とも相談しながら、たくさんの衣装の写真からイメージに合うものを選んでいく。

ある程度絞り込んだら、実際にアパレルのプレスルームに行って実物を見せてもらい、リースの契約をする。

主役の瞬の衣装はもちろん、妻や息子、脇役まで、登場人物のほとんどの衣装を考えなくてはならない。

まずは主人公の家族3人の衣装を固めてから、徐々に他の衣装を決めていくことになり、早速プレスルームにアポイントを取った。

「陽子さん、そろそろ行きましょう」

分厚い書類を手に、明日香は陽子に声をかける。

「はーい、今行く」

オフィスにいる紗季と葵に「行ってきます」と挨拶して、二人は車に乗り込んだ。

「えーっと、今日は何件回るんだっけ?」
「5件です」

エンジンをかけながら明日香が答えると、陽子はヤレヤレと肩をすくめる。

「まったく。何もそんなにピチピチタイトなスケジュールにしなくてもいいのに」
「いいじゃないですか、ピチピチ」
「明日香はいいけどさ。おばちゃんはゆったりがいいの」
「だから、陽子さんはおばちゃんじゃありませんってば。まだまだピチピチですよ」
「確かにウエストきつくてスカートはピチピチですよーだ」
「そっちのピチピチ?」

そんなことを話していると、最初のオフィスに到着した。