同じ頃、藤堂家では…。

「うひゃー、凄い数のいいね!もう俺のSNSがパンク状態!見てみろよ、ほら。監督の次の作品、楽しみにしてます!『トップアイドルの恋』ぜひ瞬くん主演で撮ってください!だってさ」

自宅のソファで興奮気味にパソコンに向かっている監督に、料亭から帰ってきたばかりの女将が着物姿のまま呆れたように声をかける。

「なーに喜んでるの!全部瞬くんと明日香ちゃんのおかげでしょうよ。それなのに、ちゃっかり自分のこと売り込むなんて。いい歳したおじさんが恥ずかしくないの?まったくもう、これだからおちゃらけオヤジは…」
「いいじゃないの。お前だってあの二人の結婚が決まった時、はしゃぎまくってたじゃないか」
「そりゃそうよ。今どきあんなにピュアなカップルいる?もう見てるだけで心が洗われるわ。瞬くんのインタビューを、それはもう食い入るように見てたのに、横からこのモッサリオヤジがフレームインして。はあ、全国の皆様に申し訳ないわ。いい?私と結婚してるなんて、絶対に言わないでよ?」
「ええー?!なんでだよー。あの二人にあやかって、俺達もちょっとくらい仲良くしようぜー?」
「ぜっったいに嫌!」
「そうつれないこと言わないでさ。ほら!瞬と明日香ちゃんうちに呼んで結婚祝いしようぜ」
「あなたがいない時にね」
「なんでだよー?そんな寂しいこと言うなよー」
「ああ、もう、ウザい!」

二人のやり取りの横で、パソコン画面のいいね!の数は、飛ぶように増える一方だった。