その言葉をきっとソフィアも望んでいた。
このまま一緒に逃げることができればどれだけ楽しい人生が待っているだろう。

だけどソフィアの中の世界はほとんど8歳の頃で止まっていた。
そこから先はあの小部屋のことしか知らない。

だから……「私はいいの」と、左右に首を振っていた。

なにも知らない世界に出ていくよりも、あの小部屋に戻ったほうがソフィアにとって安息を得ることができる。

それは長年檻の中で暮らしていて、外の世界に怯えるようになった犬のようなものだった。
ここから先に行くことはどうしてもできない。